インド・ムンバイでの2年間の経験が鍛え上げたのは交渉力、コミュニケーション力 そしてどんな壁をも乗り越える精神力と気概

PROFILE

高校時代はハンドボール部に所属。体育祭の時には応援団長としての活動も。大学ではバックパックを背負って世界中を旅した。世界を旅した経験から、困難なことも乗り越える精神力の強さと行動力のたくましさには自信あり。入社後念願の貿易部門に配属され、2014年にインド/ムンバイの現地法人へ赴任。2016年に帰国し、インドで培った経験を活かし、さらに自分自身を切磋琢磨する毎日。

海外で、新興国の発展に仕事で貢献したい 入社時に抱いた思いの行き先は、インド

 「就職活動の時に1つの軸にしていたのが、海外で働きたい、ということでした。その視点で考えると、最も早く海外に行けそうなのが商社。また、世界中の新興国の発展にも仕事を通して貢献したいと思って出会ったのが、鉄という商材を扱う鉄鋼商社。鉄は、世界中の身の回りのもの、あらゆるものに使われており、そこに魅力を感じました。さらに鉄鋼商社の中でも、JFE商事の社員の方たちの仕事への取り組みや思い、それを語る姿が自分の将来像にも重なったことが、入社のきっかけになりました」。杉下の入社動機は、いたってシンプルだった。応募の時に抱いていた海外での仕事の意向は、入社早々から実現されるようになる。入社後、現在の第二薄板貿易室に配属されると日本からアジア向けを中心とした鋼材輸出を担当した。そして、3年目となる2014年1月から、インドのムンバイへ駐在員として派遣されることになった。GDP成長率も高く、2021年には人口も世界一になると予測されており、世界的に注目されているマーケットでもあるインド。JFEグループとしてもインド有数の鉄鋼メーカーと提携を結ぶなど、現地のネットワーク整備・販売力の強化には力を入れている。「インドは学生時代から興味を持っていた国でしたし、話をいただいた時も自然と受け入れられました。仕事の内容は、大きく2つ。インドを含めた周辺国への鋼材の輸入と第三国へのインド材の輸出でした。入社前から抱いていた、『海外で仕事がしたい』という思いが実現したことが嬉しかったので、1日も無駄にしたくない、という思いがとにかく強かったですね」。

インドでは輸出・輸入業務に奔走。さらに新規開拓のためバングラデシュやネパールへ

 杉下が思っていた以上に、インドでは多くの困難が待ち受けていた。「言葉については、行く前は心配していなかったのですが、いざ行ってみるとインド独特の英語だったりするので、何を話しているかが最初のうちは全く分からなかったです。面談レポートも、現地スタッフのサポートなしには書けない状態でした。また、食べ物も中々なじめず、顧客との食事もカレーを中心にスパイス、油の多い食事が殆ど。最初の3ヶ月は、しょっちゅうお腹もこわしていました。慣れてきたのは、半年ほどしてから。また、新たな販売先の開拓の為に、インドだけでは限界があると感じ、バングラデシュやネパールにもたびたび出張していました。全く情報の無いフィールドでの新規開拓であり、ネット情報のみを頼りに、何度も顧客へ電話をかけたりもしました。しかし、たらい回しにされたり、電波環境が悪い為に相手の言う事が聞こえない事も多く、最初は飛込み営業が多かったですね。1社開拓できたら、その1社より現地の情報を聞き出して、また別の顧客へ飛び込んだり。すべてが手探りの状況でした」。
 事前にスケジュールを立てて行動する事もあったが、予定通りには進まない。街中で人、牛、車、リキシャがひしめき合う中、移動時には大渋滞に巻込まれて面談に間に合わなかったり、突然の停電に見舞われて、商談がストップするなどのアクシデントが日常茶飯事のように起こっていた。「どんなことが起こっても動じない精神力は随分鍛えられました。ある時、顧客の手続き上のトラブルで、オーダーがキャンセルになった。すでにメーカーには製造依頼をしているので、替わりにその鋼材を買って頂けるお客様を探さねばならない。上司からは、『3日以内に決めてこい』という指示。特殊な規格であった為、購買可能性のある顧客は1社のみ。即フライトを手配し対象顧客の事務所へ飛び、その場で5時間以上の交渉を経て、何とか商談を纏める事が出来ました。改めてその顧客から契約書をいただき、両社の利益に貢献できたと実感した瞬間は、本当にしびれましたね。経験は浅くとも、自分なりに成果を出したいと思っていたので、つねにポジティブに考えて、次に向かう。その繰り返しで、徐々にですが、成果も出るようになってきました」。

真剣に交わした主張のぶつかり合いが築いていた、取引先・顧客との信頼感

 インドの鉄鋼メーカーの担当者とは週に1度は必ず会って、価格、納期、仕様など様々な交渉で、胸をつき合わせながらお互いの主張をぶつけあった。「担当とのミーティングでは、意見がぶつかる事も多かったのですが、最後の商談時に日本への本帰国を伝えると、自分がつけていたネクタイをはずし、『お前は他のどの日本人担当よりもアグレッシブで印象的だった、これからも俺の事を忘れないでくれ』と言って渡されました。お気に入りのものだということは知っていたので、その心遣いにぐっときました。嬉しかったですね。」
 時にぶつかりながらも信頼関係を築き、その信頼関係が大きなビジネスに結びつく。インドでビジネスの醍醐味を体感した杉下は、二度目の海外駐在を目標に自分自身の成長により拍車をかけていくことだろう。

COLUMN

「バングラデシュやネパールでは、顧客の工場の技術支援も行いました。メーカーの技術者の方と一緒に伺い、製造過程や設備などの相談に応じて、困っている事を解決する。顧客にも喜んでいただいて、その後の関係性もさらに深めることができました。」

「毎日大変なことばかりでしたが、それ以上に2年の駐在期間は楽しいことも多かったです。インドをはじめ様々な国の方とのつながりもできました。休日は広大なインドを旅したり、友人とクリケットの打ちっ放しで盛り上がったり。満喫していました。」

「仕入れ先であるインド鉄鋼メーカーの担当者とは、ミーティングのたびに熱く議論していたように思います。でも、そのやりとりが、結果としてお互いの信頼関係を深めたと思います。頂いたネクタイは、今でも大切に使っています。」

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